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2018.07.09

今月の一品(39)ウラルトゥのベルト

 「工芸品の歴史」コーナーの初め、青銅製品が並べてあるケースの手前の所に、模写スケッチと一緒に展示されている青銅の帯です。紀元前9世紀から7世紀の間のトルコの遺物という説明が素っ気なく書かれていますが、まず間違いなくウラルトゥの物です。以前にも記しましたが、ウラルトゥとは、紀元前9世紀から8世紀にかけて、トルコ東部のワン湖のあたりを中心に広大な地域を支配した強国で、青銅の遺物で有名です。
 このベルトも、本体の図柄はちょっと見難いのですが、幸い、手前に示されている模写の絵を見ると、どのような物が描かれているかよく解ります。


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青銅ベルト右側部分の模写
この模写図は、今トルコのカマンで発掘の指揮を執っている大村所長が、若いころ作成されたものです。考古学者というのは、出土品の精確な記録を残さなければなりませんから、皆さん絵が上手なのですが、これを見ても、そのことが良く解ります。この模写図を見て行くと、折敷いて弓を引き絞った武人とか、山羊やライオンのような動物、それに魚類などが目につきます。羽根を広げてペンギンスタイルで立つグリフィンのような生物も描かれています。大村所長によれば、これは、頭は猛禽、足はライオン、尻尾は魚という構成になっているそうです。

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青銅ベルト右側部分
これらの生き物は、真ん中から左側では左向き、右側では右向きに描かれています。右の端にある「生命の樹」の部分がバックルに相当すると思われますから、ベルトを締めた時に、皆前向きになるように描いてあるということになります。生き物たちを区切っているのは、波状文という模様で、生命の樹から流れ出ている水流を象徴していると言われています。「生命の樹」をはじめとして、ここに描かれている生き物類は、想像上の物も含めて、古代メソポタミアの遺物によく登場して来る存在ですから、ウラルトゥもメソポタミア文化圏に属していたことが読み取れます。

 この青銅のベルトの周囲には小さな穴が点々とあります。これは、裏地に当てた革を縫い付けて留めるためのものです。確かに、いくら青銅が柔らかい金属であると言っても、そのまま体に巻き付けたら、擦れて痛いでしょうから、裏に革を張り付けたということは十分考えられます。しかし、それでも、日常的に身に着けるにはあまり着心地の良いものではなかったでしょうから、何か特別の儀式の時等の晴れの装いとして、使われたのではないかと推測されます。因みに、このベルトが実際に使われていた時には、今展示されているような青緑色の地味な色合いではなく、すぐ脇にサンプルで示してあるように、明るい銅色に近いものだった筈ですから、偉い人が儀式のときにこれを腰に巻いて登場すれば、かなり華やかで特別な存在に見えたことだろうと想像されます。威厳を示すためには、腰のあたりの違和感は我慢しろということなのでしょう。

平成30年7月  羊頭

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