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2016.10.31

今月の一品⑲針鼠形土製品

 中近東文化センターの名誉総裁の三笠宮崇仁殿下が亡くなられました。謹んで哀悼の意を表します。

 

 さて、今回ご紹介するのは、ハリネズミです。今年1月にご紹介した牛頭型リュトンの隣にいます。

 ハリネズミは、現代の都会で暮らしている人にはあまりなじみのある動物ではありませんが、古代の人々にとっては、結構親近感のある存在だったようです。この動物にかかわる色々な遺物がメソポタミアからエジプトにかけて出土しています。特に、エジプトでは、籠に34匹のハリネズミを入れて運んでいる有様がレリーフに描かれていたり、スカラベ風のハリネズミ像などもありますから、かなり日常生活に入り込んでいたようです。

 でも、これらのハリネズミを何に使ったのかというと、必ずしも判然としないのです。一説には食用にしたと言われますが、それほど美味だという話も聞かないし、サイズから考えても、食料にするには、かなり大量のハリネズミが必要になりますから、ちょっと疑問符が付きます。愛玩動物としてなら、現代にも共通する用途ですから、可能性は高いと思います。でも、個人的には、この動物に頬ずりしたいとは思いません。それに、何でもかんでもミイラにした印象のある古代エジプト人ですが、ハリネズミのミイラは、まだ見つかっていないようです。小さすぎて壊れてしまって残らなかったのかも知れませんが、そもそも作らなかったのだとすれば、あの世にまで居て欲しい生物とは考えられていなかったということになるのでしょうか。

 このテラコッタ作品は、とても簡単な作りですが、ハリネズミの感じがよく出ていて、古代の製作者のセンスに感心させられます。腹側の足の部分に比べて、胴体が不相応に大きく、背が高くなっているのは、ハリネズミが怒って針を立てている様子を写したからに違いありません。紀元前3000年紀後半の作とされていますから、ごく初期のアッシリアで作られたことになります。このハリネズミ像が何に使われたかは、ご本尊と同様に全く解りません。子供のおもちゃとか、一家のお守りなどが考えられます。お墓への伴葬品だったのかもしれません。何にしても、古代に、ハリネズミ好きの工人がいたのは確かなようです。

                             平成28年10月31日 羊頭

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