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2017.05.31

今月の一品(26)青釉黒彩人物形瓶

 イスラーム陶器の技術が様々な発展を見せた1213世紀に作られた人形型の瓶です。花瓶だと言われています。以前ご紹介した「母子像」の右隣の大型展示ケースに入っています。

 この瓶は、1977年から87年まで中近東文化センターの理事長をされた三上次男博士から当センターに寄贈された品の一つです。三上博士は、手に取って調べることを重視された実証型の学者で、生涯をかけて、研究材料としてのイスラーム陶器を集められました。そのコレクションには、イスラーム陶器が系統的にほぼ揃えられている、と言われています。

 立体的な造形と実用性を追求したこの瓶の出土地とされているイランのレイは、今でこそテヘランの南の郊外に位置する一区画ですが、テヘランよりもずっと以前から栄えた、ペルシアの歴史的な中心都市でした。

 この青釉黒彩は、素地の上に黒い絵具で図柄を描き、青い釉をかけて焼き上げてあるので、同時期のラスター彩などに比べると、かなり地味な印象を受けます。特に、写真で見ると模様があまり目立たず、描かれているものが解り難いのですが、実物ではかなりハッキリとした図柄が浮かんで見えます。それに、この沈んだ色合いの花瓶に、明るい色の花を活けると、相当引き立って見えただろうとも想像されます。

 デザインを見ると、女性が両手を左胸のあたりに掲げて、何か輪のようなものを持っているようです。私は勝手に、タンバリンか小鼓のような楽器を持っていると想像しています。体全体が左に傾いているのも、この楽器をたたく動作を表しているように感じます。絣模様のゆったりとした衣服を着て、帽子の下からは、真ん中で分けた長い髪が肩まで垂れているのが分かります。帽子を被らせたのは、瓶としての注ぎ口を無理なく作るための工夫だったのでしょう。目の描き方はあまり判然としないのですが、右と左で黒目と白目が入れ替わっているような感じがします。左頬には点々が、右頬には何やらかぎ型の模様が描かれていて、左右不対称の不思議な絵柄です。そばかすかニキビの跡かと思ったら、解説書には化粧だと書いてありました。足は左足だけが見えていますが、おそらく胡坐座りをしているのでしょう。

 私は、この像を見る度に、時代背景も素材も色合いも大きく異なっているのですが、奈良薬師寺の神功皇后像を連想します。女性がどっしりと座っている感じが両者に共通しているせいなのでしょうか。ン!そう言えば女房にも似てるかナ?

平成29年5月31日 羊頭

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